埼玉栄中学・高等学校 マーチングバンド

Drum Corps Fun vol.4(2009年4月18日発行)に掲載

埼玉栄中学・高等学校マーチングバンドは、昭和54年から吹奏楽部内の活動の一つとしてマーチングに取り組み、昭和57年4月からはマーチングバンド部として独立。たった3人の部員からのスタートだったが、現在ではグランプリ1回を含む金賞12回受賞するなど全国でも圧倒的な存在感を示しているマーチングバンドである。

「マーチングは音楽をこよなく愛していた亡き校長先生の勧めが始めたきっかけでした。素人目から見たら同じ楽器を使っているわけだし簡単に出来るのだろうと思っていましたが、実際には簡単なことではなかったですね。だからここまで出来るとは思っていませんでした。今だから言えることです。」と埼玉栄中学・高等学校マーチングバンドを率いて28年になる顧問の須永先生からインタビュー冒頭にこのようなエピソードをお聞きした。
須永先生は中学校から大学3年まで吹奏楽部でサックスの経験。しかしながら当時はマーチングなどもちろん知る由もなく、文字通りゼロからのスタートだったそうだ。その時点では本当にやっていけるか不安があったという。そんな不安を抱きながら吹奏楽部から独立の際には3名の3年生がついてきた。吹奏楽部に残れば3年間の成果を学校から表彰されるはずだが、一緒にやりたいと言いついてきてくれた、その感動は今でも忘れないそうだ。
吹奏楽部の中でマーチングに取り組んでいた昭和55年には、木管楽器も含んだ編成で全国大会には出場したものの、昭和57年に独立したのをきっかけにフロアでやるのであればフロントベルの金管楽器でやろうということを早くに決めたそうだ。
3名から活動をスタートした部員数も今年は103人のメンバーへと成長したが、学校内には吹奏楽150名、コーラス100名いるなかでの勧誘となるので、部員集めにはとても苦労をするそうだ。ただ、マーチングに入ることを目的に入学してきてくれる生徒も多く、県外(東京・神奈川・千葉・栃木・群馬・長野・秋田など)からの入学者においては特例として数名が運動部の寮に入って活動をしているとのこと。卒業生もDCIや一般バンドでプレーしたり、インストラクターとなったりとさまざま。現在はアメリカWGIの強豪チームRCC(Riverside Communi Colledge)で活躍している卒業生もいる。
練習は月数回の休みを基本として行われている。練習場所に関してはとても苦労しており、音を出しての練習は校内にあるステージドリルが出来るほどのスペースの多目的ホールで行い、ドリルの練習は運動部の練習が終わった後の校庭で、限られた時間の中で効率良く取り組んでいるそうだ。「感謝の気持ちを忘れずにやって欲しい。自分一人でやっていることではないし、自分が栄でマーチングが出来ていることに誇りを持って欲しい」と3年で渉外担当の田中さんが後輩たちへのメッセージを聞かせてくれた。その想いからも分かるように学校の後押しがあってこその部活動ということはメンバー一人一人がとても理解していることが感じ取れた。

部訓「集団美・そして感動!」

「一人じゃ決して出来なく、大勢のメンバーが集まって一つのことを作り上げ、それが出来たときの喜びが分かち合えることがマーチングの魅力」と話してくれたのは部長の富田君。一年間、部長として心がけた点を聞いてみると、「大人数のメンバーに自分の意見を聞いてもらったり、理解してもらうために、部員一人一人の気持ちを考えるように心がけました。ただ言うだけではダメで、どうしたら通じるかをしっかり」と話してくれた。
須永先生にとって年間の活動の中で一番感動する場面は、「大会のグランプリ・金賞を取ったときの感動はもちろんだが長いシーズンの中で直しがあったりしても、最初の一番にランスルーが出来たときの感動っていうのは何者にも変えがたい。よくこいつらやったなぁって思う。縦の関係、横の関係、いろんな苦労を味わって、初めてこの形が出来るわけですから。」だという。そんな須永先生の部活動への真剣な眼差しは生徒達にもしっかりと伝わっており、来年度部長の下里君と来年度渉外担当の西浦さんも口をそろえて、「須永先生は本当に部活のことを考えてくれています。そして悩んだ時も部員の気持ちになって一緒に考えてくれる尊敬できる先生です。」という。
年間の活動では大会だけになると生徒達もキツキツの3年間で終わってしまうので大会バンドには決してしたくないという気持ちがあるそうで、イベントには可能な限り参加することを意識しているという。今後もコンサートなどを含めて周りと楽しめることをしていき、みんなで楽しめるバンドにしていくことを心がけたいとのこと。
最後に今後の活動に対する想いを須永先生に聞いてみた。
「マーチングには夢があります。どんなにやってもやり終えなく、もっともっとというように終わりのない向上心を持てるのが素晴らしいです。そして、インストラクターが持っている専門的な知識と自分達なりの考えをうまくマッチングして、自分たちの好きな色にして表現していく面白さへの追求はまだまだその途中という気持ちで取り組んでいきます。」

先生と生徒たちが一体となって同じ方向に取り組んでいくその姿勢はスタート地点も今も変わらないからことに埼玉栄中学・高等学校マーチングバンドの強さの秘訣を感じた取材となった。

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