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2005 DCI World Championship

2005年のDCIは各ディビジョンで壮絶な戦いがくりひろげられた。ディビジョン3ではレイダースが優勝、ディビジョン2ではイーストコーストジャズが逆転優勝、そしてディビジョン1はキャデッツが史上最高得点タイで圧勝となった。そんな2005年DCIをアメリカDrumCorps World誌提供のもと、より詳しく振り返ってみたい。

DCI 2005 ディビジョン Iファイナル

「DCI最終決戦でキャデッツが9度目のタイトル獲得」
by クリスティーナ・マヴローディス-デンプシー, DCWスタッフ

2005年8月13日 – マサチューセッツ州フォックスボロ . . . 2005年はドラムスピーク(ボイスパーカッション)、口笛、オーバーチュア、大道具を囲むドリル、異性の侵入、偽りのまたは驚きのエンディング、予期せぬ順位、無くならないタイ(同順位)、ショーと観客の相互アクションの増大、ピットナレーション等話題の多いシーズンだった。最終分析としては、革新の超現実的なミックスと突出した完成度がキャデッツにゴールドメダルをもたらしたと言える。今回キャデッツは全ての審査キャプション、そしてさらに細かいサブキャプションに至るまですべてにおいて1位を総ざらいするという偉業を成し遂げた。

エキシビションショー

この半世紀で最もホットなチャンピオンシップを迎え、アナウンサーのダン・ポーターがよく響くベースボイスで、第34回DCIワールドチャンピオンシップの会場、ジレットスタジアムに集まった2万人を越える観衆を歓迎した。

ゲストのUSマリーン・コーの演奏、”The Commandant’s Own”でこの夜は幕を開けた。今年のショーはウエストサイドストーリーの“アメリカ”からリムスキー=コルサコフのシェエラザードまで幅広いレパートリーだ。抜け目のない観客たちはマリーンのソプラノのハイノートに歓声を上げ、“星条旗よ永遠なれ”のカンパニーフロントでは立ち上がって拍手を送った。そして最後にコンダクターは国歌斉唱へと皆を導いた。

1位 The Cadets キャデッツ
“The Zone [Dreamscapes in Four Parts with a Door]”

The Cadets/photo by Jeff Hiatt

o ショーは夢から始まった。実際、ビジュアルキャプションヘッドでありプログラムデザイナーであるマーク・シルベスター氏の夢なのだ。キャデッツの優勝が決まった後彼に思わず抱きついたガードスタッフの一人は、「彼がこのショーについて説明をした時、メンバー、スタッフ、役員、皆彼を気違いだと思った。」と語った。「でも彼はその時すでにこのショーの全てのビジョンを持っていたんだ。」

「これは超現実の世界だ。」シルベスター氏は説明した。「観客が親しみやすいように“トワイライト・ゾーン”のテーマを加えた。」このショーは超現実世界をベースにした要素で満たされている。メンバーのユニフォームは前後どちらから見ても一見同じ姿に見えるようにつくられている。シェイコでさえ後ろ側にも「つば」があり、メンバーが後ろを向いて去っていってもまだ向かってくるかのような不思議なイリュージョンをつくり出している。クリーム色のガードのコスチュームにはフードが付いており、そのかぶったフードの後ろ側にも顔が描かれている。両手を耳のところまで上げた、あの有名な“ムンクの叫び”の顔が描かれているのだ。

この作品は彼らがフィールドに入り、ドラムメジャーの紹介がなされる前からすでに始まっている。“DCIの声”ことブラント・クロッカー氏がアナウンスをしている間、すでにピットメンバーは口笛をまじえて演奏を始めており、1曲目の“キル・ビル”に向かってドリルも動き始めているのだ。ウォームアップもなければドラムメジャーの敬礼も無い。

ピットがオープニングのフレーズを続けている間、ブラスが非常に速いドリルを展開する。それからあの有名な4つの音の繰り返し、“トワイライトゾーン”のテーマをブラスが奏で始める。すぐさまピットメンバーがナレーションを入れる。「あなたはイマジネーションという鍵でそのドアを開ける、、、異次元の向こうへ。視覚とサウンドだけではなく、心の次元を越えて。次の行き先は、、、ザ・ゾーン。」

ショーが始まる前、白いブラウスに縞模様スカートの制服を着た一人の女子高生が、観衆に助けを求めながら自分の家を探してさまよう。フィールドの中央に歩み出ると、50ヤードライン上(フィールドの中央)に置かれて最後まで動かない、先ほどのドアを発見する。「1313」と書かれたそのドアの前まで来たが、彼女は開けるのをためらった。

スタンドの観衆からおかしな警告の声がたくさん飛ぶ、「Don’t do it!(開けちゃあいけない!)」。しかしもう遅い(笑) 彼女は呼び鈴を押してしまう。ピットのビブラフォンが「ピンポン♪」と音を鳴らすのがまたおもしろい。するとさらにまた観客が裏声でおばあさん風にそれに答える、「どなたぁ?」。

少女ホリーはその家に入るとすぐにセットが回転し、別のドアから黄色のレインコートに傘を持った姿で再び現れる。この水をテーマにしたシーンではブラスアレンジャー、ジェイ・ボクック氏のオリジナル曲“リキッド”を使用している。曲は流れるようなムードで、レインスティック(雨の音を出す民族楽器)を使用したり、スネアドラムにパラパラという水音を表現させたり、ガードメンバーの胸には魚の絵まで描いて水のイメージを醸し出している。

次にホリーはチェスゲームのクイーンになり、ドラムラインをチェスの駒に見立て、彼らに指示を出して動かし始めた。ガードのコスチュームの胸には今度は白や黒のチェスの駒が描かれおり、架空の城のモチーフが描かれたシルクプリントのフラッグを使っている。

再びドアの中に入ると、今度は工事現場の作業着の姿で現れる。金属の耳障りな音がパーカッションソロ ”Dancer in the Dark”へと導き、それはさらにボーカルによるバッテリーサウンド、「ドラムスピーク」で最高潮に達する。

狂ったようなアレンジの“メディア”を使った最後のシーンでは、ホリーがそれまでに登場した彼女の3人の分身と出会う。芸術的な鍵穴が描かれたフラッグとドアの周りを取り囲むドリルが、不吉なサインであるドクロと骨のマークを一瞬かたどる。最後に今一度“トワイライト・ゾーン”のテーマがリフレインされ突然ドアが開くと、、、グリーンのポロシャツにカーキのパンツをはき、クリップボードを手にしたジャッジの姿になったホリーが現れる。激しい順位争いの中でのこのブリッジメン/VK系の(いずれも過去に存在したコミカルなドラムコー)ユーモアは、予想もしなかった大歓迎の演出だった。

シルベスターはすぐにパフォーマーたちについて評価し始めた。「人々はショーについて語っている、しかし今夜はメンバーについて話そう。彼らを教えることは自分の喜びなんだ。マーチをクリーニングしたり、そういったことが本当に楽しい。そして今日その作品を外から見てみたが、彼らはまさに自分が心に描いた通りのことをやってくれたよ。」「ガードは彼らの人生の行程を演じたのよ。」ガードスタッフのギリガンが付け加えた。「あれは(超現実ではなく)ごく普通のセットなんだ。」彼女はまさにその通りといった表情でうなずいた。彼女らはこれからどこへ行くのか?シルベスターは肩をすくめて言った、「振り出しに戻るだけだ。」

2位 The Cavaliers キャバリアーズ
“My Kind of Town”

The Cavaliers/photo by Ron Walloch

3位 Phantom Regiment ファントム・レジメント
“ラプソディ”

Phantom Regiment/photo by Harry Heidelmark

4位 Bule Devils ブルー・デビルス
”Dance Derby of the Century”

Bule Devils/photo by Jeff Hiatt

5位 Bluecoats ブルーコーツ
“キャラバン”

Bluecoats/photo by Jeff Hiatt

6位 Madison Scouts マディソン・スカウツ
“カルメン・プロジェクト”

Madison Scouts/photo by Jeff Hiatt

7位 Carolina Crown キャロライナ・クラウン
“Angelus(お告げの祈り)”

Carolina Crown/photo by Jeff Hiatt

8位 Santa Clara Vanguard サンタクララ・ヴァンガード
“ロシア:Evolution/Revolution:1917-1991”

Santa Clara Vanguard/photo by Jeff Sallee

9位 Boston Crusaders ボストン・クルセイダーズ
“Ode to Joy(歓喜の歌)”

Boston Crusaders/photo by Jeff Hiatt

10位 Blue Knights ブルー・ナイツ
“A Midsummer Knights Dream”

Blue Knights/photo by Dan Scafidi

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