北九州市立香月中学校

Drum Corps Fun vol.1(2006年4月27日発行)に掲載

北九州市立香月中学校は、北九州市内でマーチングに取り組んでいる数少ない中学校のひとつだ。3年生22名、2年生16名、1年生19名の総勢57名で、これは全校生徒のおよそ6人に1人にあたるが、マーチングバンドとしての人数は決して多くはなく、むしろ少ない

「感謝の気持ちを忘れずに」をモットーに日々練習に励む彼らを率いているのが赴任して今年で6年目を迎えた顧問の村上大五郎先生だ。
6年前の赴任当初、この香月中学校の吹奏楽部はほとんど無名で、北九州吹奏楽コンクールでは毎年のように銅賞。マーチングはしていなかった。
そんな団体をわずか3年で「マーチングバンドバトントワリング全国大会」という夢の舞台にたたせてからというもの、以後4年連続全国大会出場という輝かしい実績を残している村上先生のすばらしい指導力には目を剥くばかりだ。

放課後、合奏が行われている音楽室から怒声が響くこともしばしば。しかし、ただ厳しいだけではなく、「子供たちに一生に残るすばらしい思い出をつくってあげたい」と考えてる村上先生を慕ってついていく部員は一丸となり、大小さまざまなハードルを越えていく。

また、そのための工夫としてか、この吹奏楽部の仕組みは少し変わっている。統括部長を筆頭に、音楽面での指導を行う音楽部長、生活態度を取り仕切る生活部長。これら3役の部長が各学年3人ずつ、計9人いる。また、その他にも多くの係がある。各パートをまとめるパートリーダー、マーチングの衣裳や大道具を管理する衣裳係、練習会場やイベントなどの移動の際にはかかせない力持ちの楽器運搬係。地域の方々や保護者の方々からの差し入れを部員に配る厚生係などというのもある。これらはほんの一部であり、その仕組みは生徒会さながらだ。この仕組みは1人ひとりが責任を持つことで成り立っており、ここで部員は責任感や忍耐力、そして協調性を日々学んでいる。

香月中学校は、「さいたまスーパーアリーナ」で行われている「マーチングバンドバトントワリング全国大会」のような大舞台にばかり出ているというわけではない。道幅2メートルくらいの細い露地でのパレードや、幼稚園の広場を舞台に演奏・演技を披露することも多々ある。

さらに彼らは地域のイベントにもよく参加する。
全国的に有名な5月の博多どんたくまつりで行われる「どんたく花のマーチングパレード」は、入部したばかりの1年生のデビュー戦でもある。マーチング衣裳に身をつつみ、パレードする先輩の後をポンポンを持って踊りながら、3キロにも及ぶ長い道のりを一生懸命について行く。

地元で毎年恒例の8月の花火大会ではステージを設け、マーチングはもちろんのこと、映画音楽や演歌などをはじめ、地元でいつも応援してくださる方々のために、心を込めてさまざまな曲や華麗なパフォーマンスを披露する。

このように地元にすっかり馴染んでいる香月中学校吹奏楽部には、地元企業からも出演依頼の声がよくかかる。「地域の行事への積極的な参加」をもうひとつのモットーにする彼らは、バスの開通式があると聞けばファンファーレの演奏に出かけ、グランドの落成式があると聞けば、たとえ雨の中でも元気な音を響かせる。1日に2ステージをこなすということもあるそうで、まさに東奔西走だ。

得意なレパートリーは演歌だという彼らは、毎年3月に行っている定期演奏会「ハートフルコンサート」で今年は「美空ひばりメドレー」を演奏したという。またこの「ハートフルコンサート」では、卒業生たちで構成されたOBバンド「香月ウィンドオーケストラ」の演奏もあり、多くの見所があった。

年間数十ステージもの本番をこなす彼らを支えるのは地域の人々や、保護者の方々、そして香月中学校の先生方である。
4年連続出場している全国大会は12月に行われるため忙しくはないはずはないのだが、必ず部員の晴れ舞台を見にきてくださる先生も多い。

そして校長先生は、遠征でどんなに朝が早くても、どんなに帰りが遅くなっても、いつも学校で待っていてくれる。バスから降りて大会の結果報告をしたとき、部員ひとりひとりの顔をみながら「おつかれさま」という校長先生の声を聞くと、長い遠征から帰ってきたことを実感する。

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