TONAN Marching Band The Gryphons

Drum Corps Fun vol.1(2006年4月27日発行)に掲載

TONAN Marching Band The Gryphonsは高校生とOBとの合同バンドとしてスタートした。2004年マーチングバンド全国大会に初出場、今年は関西大会第1位を獲得し全国大会は7位と素晴らしい成績をあげた。このGryphonsの結成から現在に至るまでの道のりと練習内容について高橋亮先生にお話をうかがった。

塔南高校吹奏楽部がマーチングを始めたのは1989年秋のことで、翌1990年9月には初めて吹奏楽連盟のパレードコンテストに出場したのがはじまりでした。しかし、コンテもなく、文字通りマーチ1曲でフィールドを回っていただけだったんです。その後、パレードコンテスト関西大会で金賞を受賞するまでになりましたが、1994年秋には、現役部員数が40人を割り込む状態となり、1995年4月以降の2年生は8名となってしまいました。1994年暮れ、来校したOBから「卒業してからマーチングをする場がない」という話があり、「じゃ現役と合同バンド作って一緒にやろか?」ということになったのがチーム創立のきっかけとなり、1995年1月29日(日)、現役とOB有志で設立Meetingをおこないました。これがGryphonsの正式な誕生日となり、名称はとりあえず「TONAN Marching Band」に決まりました。

結成2シーズン目の1996年、チーム名「The Gryphons」が決まりました。鷲の上半身とライオンの下半身をもつギリシア神話の怪獣が、現役+一般というチーム構成にピッタリだというのがその決定理由です。2001年には路線をミュージカル系に定め、初めて取り組んだのが「ミス・サイゴン」でした。まずはメンバー全員がベトナム戦争を学習することからショウ作りがスタート。メンバーの気持ちに応えたかのように、4月になって大量の新入部員が入部し、80名バンドに一気に拡大しました。練習も移動もドタバタしながら迎えた関西大会の結果はいきなりの第3位、メンバーは歓喜しました。「やったらできる」。翌2002年は「レ・ミゼラブル」、これも3位。しかし大会後、約半数のメンバーはそれでも満足しました。
2003年「エビータ」、結果はこれも3位。閉会式の後、ほぼ全員のメンバーが悔し涙を流しました。このシーズンから、それだけみんなが本気で「武道館」という単語を口にしていました。そして創立10周年を迎えた2004年、「レ・ミゼラブル」を再度取り上げて「Beyond The Dream〜夢の彼方へ〜」と銘打ったショウで初めて関西2位、そして武道館への切符を手にいれました。大雨の武道館、恐らくメンバーはこのフィールドに立つことができただけで満足だったのかもしれませんね。無欲で自分たちのショウを演じ、それだけで感動していました。初の出場で第11位、メンバーも驚いていました。2005年、天野正道作曲「GR」から選曲した「Hope for Tomorrow〜明日への希望〜」関西1位、そしてスーパーアリーナの巨大さに呑まれたにも関わらず、全国7位の結果をいただきました。

Gryphonsは「現役高校生+一般メンバー」による合同チームです。2001年以降はおおよそ、現役高校生:一般=3:1 程度の比率で構成されています。合同チームで活動することについて、「大変でしょう?」という質問をいただくことがあります。もともと塔南高校吹奏楽部として、マーチングに取り組み始めた理由が「みんなでショウをつくる=全員が主役になれる」ところが原点でした。その“みんな”を通常いうところの「同じクラブの仲間」という狭義から出発して、「吹奏楽をしている人々」「マーチングをしている人々」と、より広義に生徒にとらえさせていくことが部活としての指導方針となっていることが大きく影響したかもしれません。京都府高吹連25周年記念アメリカ演奏旅行(1995)への一部生徒の参加から始まり、京都インターハイ開会式マーチングバンド(1997)、そして1998年夏から毎年京都府高校合同マーチングバンド「AUSTERS」を結成し、計5回、全国高校総合文化祭にエントリーしました。毎年5月に開催される演奏会にも「合同ステージがあり、校区中学吹奏楽部との合同演奏を続けています。
こうした合同演奏に積極的に取り組んでいる現役部員にとり、部員以外の人たちとともに演奏演技することが、今ではごく当たり前の状態になっています。Gryphonsがあったから「合同」に馴染んでいるのか、「合同」に馴染んでいるからGryphonsが続けられるのか、どちらが答えなのかは内側の人間にはよく分かりませんが、前述の方針を掲げている部活顧問としては、社会人や学生や高校生がPARTごとにTシャツやトレーナーをそろえて楽しんでいるのを、けっこう嬉しく眺めています。

毎年5月、初めてGryphonsの顔合わせに臨む新入部員たちにとって、そもそも初対面の一般メンバー全員が、その出身校と関係なく“知らない先輩たち”です。身近に日常接している上級生が、自然にその“知らない先輩”と会話し、ともに練習しているから、そこにそのまま合流していって練習を続けるうちに“知っている先輩”になっていくわけです。もちろん、それなりにいろいろ揉めごともありますが、一方で夏合宿も終わった頃になって、ようやく「えぇーっ? 先輩、塔南ちゃうかったんですか〜?!」のような会話も珍しくありません。

Gryphonsの一年間

Gryphonsの練習計画は、塔南高校の次年度年間計画に合わせて検討されています。
他の一般バンドとは違い、メンバーの6〜7割を占める高校生の学校行事が練習計画を左右します。

1. 2〜4月(基礎力強化)
現役は5月の演奏会練習、一般はその演奏会で1曲披露するステージマーチングショウを練習と、この時期だけ現役と一般が別メニューとなります。個人の基礎力強化をはかる期間と位置づけられていますが、基礎練習だけでは単調なので、1曲ショウをしあげることを通して、楽しみながら基礎に取り組めるように、という趣旨でこの形が定着しました。Battery&Pit.だけは、現役と一緒にマーチングパーカッションショウを1曲、合同で演奏するので、この時期はそのショウ曲&コンテを練習しています。

2. 5〜6月(新入部員の基礎育成と大会曲練習)
4月下旬に正式入部した新1年生部員と、演奏会終了後に初顔合わせを行い、その年度のGryphonsが正式に始動します。初日は、大会で演じるショウの原作ミュージカルについてのレクチャー(ストーリーとその時代背景、原作者の横顔、使用する楽曲と歌っている登場人物の状況と心情、楽曲試聴 等々)に半日をかけ、午後からはPART単位で何か一つ出し物を作ることになっています。このPART出し物を「ああだ、こうだ」と作っていく課程で、一般・上級生・新入部員のコミュニケーションがスムーズに始まるように、という企画なんです。作った出し物は当日の最後に、メンバーが体育館に集まってみんなの前で披露します。特に新規入団の一般や、新入部員の人となりの一端が垣間見られるので、STAFFとしても大切なイベントとなっています。この期間は「MMの統一」「サウンドトレーニング」をメインに、大会使用曲の練習とその合奏が中心となります。高校一年生は、平日も初めて取り組むMM練習と、楽器の基礎トレーニングを続けます。

3. 7〜8月(大会コンテを読む)
7月中旬、高校生の野球応援が終わる辺りで初めてコンテに入ります。8月上旬、ハチ北高原で現役は4泊5日の合宿を行います。一般メンバーも、大学生などは現役合宿日程にフルタイムで同行できますが、必ず土日を含めて、2日間は社会人を含め一般全員が合流する形をとっています。合宿でコンテをほぼ読み終え、お盆明け〜8月下旬には公開ランスルーを披露するのが恒例となっています。

4. 9〜10月(大会コンテクリーニング)
この時期の現役高校生は多忙です。2005年度から塔南高校が前後期2期制(さらにそれを区切って年間4ターム制と位置づけられている)となり、夏休みは一ヶ月、前後期の境目に秋休みが一週間あるとはいえ、スケジュール的にはよりハードになりました。また9月上旬には学園祭があり、ここでは現役高校生だけで約30分のステージサイズのマーチングショウを発表します。(部内ではこれを“秋プログラム──通称秋プロ”と称している)この秋プロは、そのまま地域の依頼演奏などでマーチングを披露する際にも演じていきます。平日には秋プロを練習し、これと平行して週末にはGryphonsショウのクリーニング、という生活になります。9月末には前期の区切りとなる2タームテストがあり、夏休みの宿題から引き続いて、学業的にも大切な時期となります。従来の二学期中間テストが10月中旬であったので、関西大会直前の一ヶ月がテストで練習間隔が開く、ということはなくなったため、10月はマーチングに集中できる、というメリットはあるかもしれません。

5. 11〜1月(全国大会へ)
過去2シーズンだけ、11月以降もGryphons練習が続いたことがあります。そのため、この時期をいかに過ごすかについては、まだチームとしてノウハウが確立したとは言えません。メンバー、特に現役高校生にとって、関西大会そのものが春からの大きな目標になっているため、過去2シーズン、とりわけ11月には一種の“中だるみ”現象がみられたように顧問・STAFFは感じています。12月の3タームテスト明けから全国大会までは、本番が目前に実感できるというためか、関西大会直前のような“熱い”練習となるのだが、11月は関西大会で燃え尽き、全国大会はまだまだ、という気持ちがどうしてもあるのかもしれません。Gryphonsのさらなるレベルアップをめざして、11月の練習をいかに活用するかが、これからの課題になっています。

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