横浜市立潮田中学校 YOKOHAMA Pacific Winds Drum&Brass Corps

Drum Corps Fun vol.3(2008年3月25日発行)に掲載

潮田中学校マーチングバンド部は吹奏楽部として50年以上前に創部をした伝統ある部活の1つ。横浜市内でもそこまで歴史のある吹奏楽部は数える程度だという。その吹奏楽部がマーチングバンドへの取り組みをスタートさせたのは今から12年前になる。創部40年が経過した時期に、その当時の顧問であった佐藤龍成先生が「この地域で潮田中学校に合うのはマーチングスタイルでは」と考えのもとのスタイル変更であった。マーチングを本格的に始めた1年目から全国大会への出場を果たし、その後、10年連続出場という偉業を達成するなどの輝かしい実績を記録している。

潮田中に赴任して6年目となる顧問の加藤治先生にバンドについてお話をお伺いした。
「自分自身も長年トランペットを吹いていましたが、マーチング経験はまったくありませんでした。指導を始めた頃は160・170のテンポで走りながら楽器を吹くのはストイックな世界だと感じたのが正直なところです。顧問になって3年目が過ぎた頃からようやくこの世界を理解し始め、ポジティブな考えができるようになりました。そして最近では、マーチングがもたらす教育的意義の素晴らしさに気づきました。マーチングは、見て指摘できる部分がとても多いため生徒達で練習が出来ます。そうしたことにより自分達でドリルを作ったり、ギミックを考えたりと生徒の中で誰かが先頭に立ち、みんなで協力をしながら取り組むという。それは吹奏楽の世界ではなかなかないことなのですが、それがマーチングの教育的効果ではないかと思います。」
今回は定期演奏会に向けての練習中の取材となったが、メンバー主体の練習でもとてもしっかりした練習内容が組まれており、指示もとても的確で教える側も教わる側も一生懸命取り組む姿が印象に残った。

地域の方には大きな音を出して迷惑をかけているのだからこそ、自分たちの活動の中で何か役立つのであれば還元したいとの気持ちから、地元野球チームのパレードや消防署の出初式、春夏の交通安全運動などの地域イベントにも積極的に参加している。そうした結果、活動に対する苦情もほとんどなく、パレード練習の一環として学校近くの土手でMM練習の為に歩く際には高層マンションの上の方からでも手を振ってくれたり、応援の声が掛けられるなど地域に愛されるバンドとなっている。

また、潮田中学校を卒業した生徒達の多くは卒業後もマーチングや音楽を続ける生徒が多く、ヨコハマインスパイヤーズ・ヨコハマスカウツ・ヨコハマロビンズなどの一般バンドや鎌倉女子・東京実業、そして天理教校に行ってマーチングを続けている卒業生もいるのこと。生徒達も全国大会の舞台で活躍する先輩をみて憧れ、そして自分達も負けずに頑張ろうという前向きな気持ちを持つようだ。

ここで面白いエピソードを一つ。潮田中の卒業生がスタッフになるためには、卒業してから3年間は他の高校や一般バンドで経験を積むことというハードルがあり、それをクリアした人がスタッフの称号を与えられるという。最近では潮田中スタッフになりたいという気持ちを持って他団体に所属するような卒業生もいるようで、実際に昨年からは湘南台高校を卒業したOGの大沼さんがドラムメジャーとして活躍中とのこと。

潮田中学校は全員レギュラーという考えを大事に活動しており、加藤先生も「吹奏楽部の世界では、人数を削って編成を作るということは当たり前ですがマーチングは違います。生徒にも四月当初から全員レギュラーだということは言って自覚を持たせています。そこもマーチングの素晴らしいところですね。」そして顧問3年目の新田健太郎先生も「その考えは部活動だけではなく学校活動の中でも同じことです。どんな場面でもレギュラーとして自覚・自信を持って色々なことに取り組んで欲しい。」と口を揃えておっしゃっていた。

インタビューの中でとても面白かったのが、夏休みの宿題を9月に入った時点で終わっていないと練習に出してもらえないという決まりがあるということ。

これはマーチングが大好きな生徒達には相当な効き目もあるようで、親御さんにも大好評のようだ。ここでも先輩がしっかりとチェックをしているので、過去にも出来なかった生徒は僅かだという。これも補欠制度がないから出来ることであり、生徒も自分の役割を理解しているから成り立つ決まり事である。

今シーズン、潮田中学校の部員は3年生が10名、2年26名、1年24名の合計60名で活動。3年生が少ないという点で苦労する事も多く、部長の池田佳史君も「部活の中で意見が割れたりする時や下級生をまとめるのが大変だった。また、練習を休んでしまうとパート練習で1年生を見てあげられない事も悩みました。」などと苦労した点を話してくれた。

ここ2年間は全国大会出場の切符はわずかなところで逃しているが、メンバー数も揃いつつある2008年度は全国大会への出場が悲願という。代々受け継がれている「出来ない事もみんなが出来る様にしようと頑張る。出来ない子が居たとして、それが見捨てるのではなく出来る子がきちんとフォローし一緒になって成し遂げていくのがマーチング」という強みこそが、きっと大編成への復活2年目の挑戦となる潮田中学校の追い風になるだろう、そう感じた取材となった。

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