湘南ドルフィンズマーチングバンド

Drum Corps Fun vol.4(2009年4月18日発行)に掲載

Qバンドの歴史を教えてください
もともとは藤沢市立本町小学校のトランペット鼓隊として活動を続けていましたが、学校のバンドとしての活動が難しくなり地域のバンドにしたらどうかという話が持ち上がったことが発足のきっかけです。私の弟が当時のPTA会長をしていたこともあり、楽器の経験があった私に声がかかり地域のバンドとして活動を開始しました。最初の頃は学校の音楽の先生と一緒にやり始めましたが、音楽の先生もだんだん忙しくなってきたこともあり、15年前に私が中心となりトランペット鼓隊から編成をマーチングバンドに変えての再出発となりました。

Q練習はどれくらいのペースですか?
15年前に学校から地域のバンドに移行した際に、もともとは学校のバンドということで学校を練習場所として使うことを約束していただくことができました。現在でも本町小学校の音楽室、校庭、その他にもいくつかの部屋をお借りして練習をしています。
練習は基本的には毎週土日です。本町小学校での練習は第2・4土曜日の午前中は校庭(音出し不可)と音楽室、午後は音楽室のみ、第1・3・5土曜日は午後のみ音楽室と限られているので、弟が経営している飲食店のスペースを利用して練習をすることもあります。

Q西貝先生の楽器のご経験、そしてマーチングとの出会いは?
私は、中・高とブラスバンド、大学時代にはジャズのフルバンドを経験しました。大学のときに知り合いに愛知県警音楽隊の方がおり、その人がコーチをしていた名古屋のバトンチームが全国大会に出るから応援に来ないかという誘いを受けて、武道館での全国大会を見に行ったのがマーチングとの出会いでした。
初めて見たマーチングの音作りがそれまでにやっていたジャズの音作りに似ていることにとても感動したのを覚えています。これはとても魅力的だなと思い、いつかチャンスがあればマーチングバンドをやってみたいと思っていました。頭の片隅にそんな想いを抱いていたところ、偶然にもそのような境遇にめぐり合ったというわけです。

Qこれまでに苦労したことはありますか?
最初は本当に分からないことばかりでした。楽器店に相談をして譜面とコンテを手に入れてもらったのですが、小学生には難しくて全然出来ませんでした。
どうしようかと悩んでいた時に、地域のミニコミ誌にバンドの活動を取り上げてもらい、同時に指導者募集も出してみたら、鎌倉女子でマーチングをやっていた卒業生の子が来てくれました。その子はカラーガードでしたがマーチングの基本動作をとても親切に指導してくれました。徐々に友達も指導に来てくれるようになり少しずつ活動も進んでいきました。現在、ドリルアレンジをしてくれている宇野さんもそこからの繋がりです。
学校のバンドからクラブチームへと変化をしたわけですが、学校の先生がやらなくなると求心力もなくなり、学校側の協力も徐々になくなってしまう傾向にもあるので、なかなか子供たちが入ってこないことにいつも悩みます。現在、母校である本町小学校の生徒は4分の1ぐらいしかいないです。

Qバンドの特徴はなんですか?
どうしてこのクラブがいいのかということを子供と親に理解を持ってもらいお友達を誘ってもらうことが大事であり、もちろん子供にとっても良いクラブにしなくてはダメだという気持ちで取り組んでいます。
一般的な学校バンドとの大きな違いですが、ここには親の役員制・保護者会がなく、強制的な負担がありません。送り迎えや練習の付き添いも親の自主性に任せています。
また、同じように子供たちにも部長・副部長などのリーダーがないのが特徴ですね。これにはとても意味があります。クラブは学校と違い週一・二回しか集まらないわけで、リーダーが土日だけで何をやっているかというと別にコレと言って何をやっているわけではないんです。でも、うまくいかないと教えている講師からプレッシャーをかけられるのはリーダーなわけでそれはかわいそうですよね。他の子達もリーダーに任せてしまい、指導者に怒られるのはリーダーばかり。他の子は全然やらないからリーダーは悩んでしまうようなことが続いたのでリーダーを作ることはやめました。
現在では、号令をかける役割を1ヶ月交代の担当制にして、ライン引きや楽器の積み込みの係りなども自分たちで決めさせています。

Q活動の中での記憶に残ることはありますか?
関東大会の2~3週間前に全然集中力がなくて指導者たちが一様に困ったことがありました。ある指導者からはリーダーがいないことが原因で6年生がまとまらないのならば、リーダー中心に色んな話をさせるようにしないとダメなのではいう声もあがりました。私ももしかするとそうなのかなと思ったので、6年生を集めて「自分達でリーダーを作った方がいいと思うなら作るけどどうする?」と聞きました。すると子供たちは「みんなで協力してやるからリーダーはいらない」と言い、結果的には一生懸命やりとげてくれたという事がありました。
全国大会に向けて練習に熱が入らなかったとき、6年生にその理由を聞いたら「全国大会に出場という目標を達成してしまい集中できない・・・・」。
これでいいの?と投げかけたら6年生は自主的にみんなで話し合い、「せっかく夢が実現できたのに、これでは最後に全国大会で嫌な思い出が残ってしまう。もう一度みんなで頑張ろう!」と。このみんなの思いが力になり、全国大会のフロアーで日ごろの練習の成果が十分に発揮できました。
特定のリーダーがいなくても、一人ひとりの自覚を育むことができたことが「全国大会初出場」という夢を実現できたことよりも大切なことだと思っています。

Qクラブチームとしての活動の中で苦労する点はありますか?
学校のクラブと地域のクラブチームとは環境が異なります。クラブチームとして活動する場合にはそのあたりを十分に理解して取り組む必要があり、学校クラブと同じような感覚でやってしまうと難しいと思います。
学校のクラブと土日しか練習できないクラブチームとの差は物凄く大きいです。まず一番の違いは小学校ではやる気さえあれば毎日朝練などで10分、20分でも楽器を吹くことが出来ますが、土日活動のクラブチームでは毎日吹くことが出来ません。また、毎日声をかけたり手をかけてあげたりすることもなかなか出来ないです。
小学生の場合、ゼロからはじめる子供が多いので土日だけの練習だと余計に大変です。ただ無駄をなくして地道にやっていくこと、そしてこちらの感覚では決して教えないことがとても大事だと思っています。軽い理論で決して教えないで、ある程度の理論があってそれを子供たちにきちんと伝えるということをしないと、子供たちの情熱にはマイナスになってしまうのです。

Q活動の中でメンバーに感じて欲しいことはありますか?
いまは感じなくても良いと思います。私もそうですが、小学生の時期のことなんて大人になってなかなか覚えていませんよね。自分の意思で何かをやっていたなんてことはなかなかないだろうし、友達と居て楽しかったけれどもすべてが心の中に残っているかというとそうでもないと思うんです。私は中・高・大学と音楽を経験して、結果的には音楽が好きだったから宝物が見つけられました。もちろんマーチング活動を通じてやってきた音楽が宝物になればそれはそれでいいし、中高に入って、他のことをやってみたりしながら自分の宝物をさがすことができればいいんじゃないかと思っています。
その宝物のメニューのひとつにマーチングがあったり、音楽があったりすればいいので、そういうことを子供たちには感じてもらいたいですね。今はその種まきをしている状態です。

Qバンドの夢を教えてください。
クラブチームは色々な地域、学校からメンバーが集まっているので、まずこのクラブに入る時には必ずひとつの壁を越えてくるはずなんです。壁にぶつかれる、そんな風に育って欲しいです。そのぶつかった壁は一人では超えられなくてもチャレンジさえできれば、あとはみんなで支えあって超えればいいこと。そして、今の結果だけを見ないで成長し続けていって欲しいです。

バンドとしてはチャレンジのひとつ材料として大会に出ています。もちろん大会に出て、良い成績を取っていくことは決して悪いことではないので、全国大会の金賞を取りたいという夢はあります。ただ賞を取るということだけを意識するのではなく、子供たちがぶつかってみんなで力を合わせてやっていけることを大事にしていきたいです。
そんな風に足りないことをみんなで補い合って、その力が伸びて伝統の力となるはずです。先輩たちが作ってきてくれたレベルを落とさないで、少しずつ少しずつ積み木を積み重ねていって、そのレベルのところまでキープが出来たら、今度はそこからあがっていく。今回、全国大会に初出場はしたわけですが、まだ自分たちの実力だけで出られたというレベルではないと思っています。
先輩たちのつくってきてくれた積み木のブロックがようやくここにきて積み上がってきたので、ここからもっと輝いていくように、子供達に力をつけていって欲しいです。

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