田中 久仁明/Kuniaki Tanaka

Drum Corps Fun vol.4(2009年4月18日発行)に掲載

日本マーチングバンド・バトントワーリング協会 副理事長

田中 久仁明

全国大会も終わった12月末日、日本マーチングバンド・バトントワーリング協会にお邪魔して、田中久仁明副理事長にこれからの協会についてお話を伺いました。

全国大会も36回大会が終わり現在749の団体が加盟していますが、40回大会までに加盟団体を1000団体に増やすことが一番の目標です。

749という数字は、実は10年前とあまり変わっていないのです。もちろん辞める団体、なくなった団体もありますし、新しく入ってきた団体もあるので多少の入れ換えはありますが680~750団体の間でこの10年間は推移しています。80~90年代の成長期には少しずつ上がってきましたが、そこからは平行線をたどっている状況が続いています。これから協会として発展していくためには、まずは加盟団体を増やしていくことが大事になってくると考えています。

私もマーチングに40年近く携わっていますが、教育的な部分ではマーチングはダイレクトに伝わると思います。音楽を知らない人でも単純に喜べる分野。クラシックを聴いてもすごいなぁと思うにはそれなりのノウハウとそれなりの経験がないと良し悪しがわからない。マーチングはおじいちゃん、おばあちゃんのように経験のない方にもある部分で感動は持ってもらえる分野じゃないですか。そういう意味では本当はもっと発展するのだろうなぁと思いつつも、なかなか現実問題としては難しいです。
音楽の分野という枠組みをみたときにも、まだマーチングは音楽分野の中に入りきれていないと思います。いわゆる音楽大学という世界の中で、作陽や尚美という大学では多少ではありますが、カリキュラムの中にマーチングを取り入れています。しかし大半の学校はそういうものは感知しておらず、これからは音楽の一分野として見てくれる環境にマーチングを成長させて行きたいと考えています。

アメリカはアメフトというものがあるので、一般の人達から見たマーチングの認知度が日本とは全然違います。しかし昨年ミッドウエストに行った時に感じたことですが、今でこそ吹奏楽やジャズと同じ土壌の上にあるマーチングも歴史的には日本と全く同じだったことを知りました。アレンジなどで活躍しているジェイ・ボボック氏に言わせると、今でも吹奏楽の作曲者とマーチングのアレンジャーとは区別されています。もちろんアメリカは日本の現状よりはずっと同じ土壌にいます。吹奏楽・ジャズ・マーチングというのが大きな格差なく扱われている。実際に授業の中でもマーチングをするわけで、大学の講座もあったりする。同じ土壌の上に上がるためには、マーチングの良さを音楽の専門家達が「本当にいいね」と思ってくれて、「マーチングをやってみるといいよ」と言うような世の中(世界)になりたいというのが夢です。日本ではいわゆるクラシックの世界の人達からすると、まだまだマーチングに対して偏見があるじゃないですか。言い方はいつも柔らかく「マーチングはわからないから」と言われる。有名な指揮者にも「マーチングは若い子たちがやると、とてもいいこと」と言われるようになりたい。
ただ、僕が現役の頃よりその垣根も随分低くなってきています。吹奏楽の大御所と言われる方々の中でも以前よりは「マーチングはやった方がいい」と言ってくれる人も増えてきています。何をすればいいかと言うと、やる人を増やすしかない。それを何とか今後の4大会の間に目標を達成したい。

具体的に一つの方法として審査の方法の改革だと思っています。マーチング専門の協会なので、そこに色を作っていかなければいけない。今、一般の部においてはキャプション別審査を導入していますが、学校というのは観点がちょっと違うと思っています。一般はキャプション別のガチガチの方法をやっていくことの方が、受け取る側(出場団体)もその方が良いと理解をしてくれていると思います。

また、審査員の養成という点では、まだまだ専門性という部分で難しい問題が残っています。実は、昨年と今年は全国大会前日で審査員の皆さんに集まってもらい、模擬審査を開催しました。これまでは模擬審査などは行わず当日になって、それではお願いしますとやっていたものを、『こういう主旨で協会としては先生に見てもらいたいのです。一般においてはクライテリアを作り、ボックスというものがあり、こういう状況のときはこのような評価をして下さい』ということをやっとこの2年で出来るようになりました。

理解をしやすいジャッジということも考えていかなければいけない。一般の部に関しては、このままどんどん進めていけばいいと思っています。審査については今までにも色々な問題がありましたが、これから先にも必ず何かしらの問題が起きる。これには審査員を養成する研修会を開催したり、このような方針の採点をして欲しいのだという勉強会を開くようになったとしても、絶対に出ないかというとそうはいかないと思います。こればかりは野球と違って…。みなさんがすべて納得出来る評価が出るかと言うとなかなかそうはいかないと思います。しかし納得していただける確率を高くして行く事に全力で当たります。
模擬審査は昨年一回目をやって、その反省をもとに加藤先生・斉藤先生がきちんと計画を立ててくださり、今年は一人の欠席者もなく全審査員が集まって、2つの項目(小・中学校の部/高校・一般の部)に分けてサジェスションをしてくれたし、この範囲だったらこの点数が出るとかの確認をしてもらいました。そういうことをやっても色んな結果がでてきますが、みんなと思っているものと大きく逸脱したものにならないという可能性は高くなってくると思います。
審査については、永遠の課題ではありますが、必ず前には進んでいかなくてはいけないので、今回は一歩進んで模擬審査をやるようになりました。

今後のところでは、一歩進んで審査員になる可能性のある先生方に集まっていただき年間二回の研修会を開くのも一つの方法と考えます。さらに、もう一歩進んで公認指導員といわれる方々にはジャッジシステムということを検討する研修会を開き、将来的には認定証をあげることも可能性としてはあると思います。そうすると公認指導員の中でも研修会でボックスのことや現場のことも理解して、都道府県大会や支部大会の審査も経験することで、協会本部も推薦できる審査員が全国大会の審査をする。将来的にはその様なことも考えていかなければならないし、考えています。

日本の場合、「トップチーム」と「やり始めたチーム」の2極があって、一般の部においては基本的には現状の流れを大切にしながら進めて行きたいと考えています。理由は小・中・高等学校とずっと続けてきた人達がさまざまなノウハウを持った中で、自分達で地域ごとにバンドを作り、自分達の色をつけています。そこに好きな人が集まってくる。現在の一般団体チームには以前よりノウハウ的情報が入りやすく、良い環境が整っているチームが全国大会に出場できています。
ただ、練習環境、経済的環境は本当に厳しい団体も多く、協会としても何かサポートできる事がないかを模索しています。

教育機関である小・中・高等学校では必ず先生がいらっしゃいます。吹奏楽では、名物先生が手腕を振るい全ての部分を司ってやることが出来きますが、マーチングはキャプションごとの指導があり環境的には先生1人ですべてを管理して指導する事が大変です。ここの点をどのようにサポートさせて頂けるかを考えて行きたい。

普及を考えると、やはり底辺となる「マーチングをやっと始めたバンドや、やりたいがそんなに環境も整ってないバンドにもこれからもっとやってみよう」と思ってもらうには、そういう相談を受け入れて、それを現場との即応性ということも考えてクリアしていかなければいけない。普及を意識した時には、やろうという意欲を湧かしてもらえるバンドを発掘して行きたいです。分母を増やすということはトップチームではないところを増やすことになるので、これからやってみようかなと思ってくれる環境の整備をしていくことが、マーチングを広く社会に認知してもらえる一つの要因で、これが今の重要な協会の使命と考えています。

先ずは各県の大会に、もっとステータス性を持って頂きたい。高校野球だったら県大会に出るということも誇りになる。今の県大会は一つのステップでしかない地域もあり、出演しておかないと支部大会に進めないので出るだけ。支部大会の位置付けにしても全国大会へノミネートする一つの手段。もちろん東北、関東や九州などでは支部大会としてのステータス性は随分と上がってきました。しかし全国を見渡した時には、まだまだ県大会もない状態からいきなり支部大会という所だってあるというのが、全国大会36回を数える歴史があってもそのような状況にあります。本来ならば、47都道府県すべでて都道府県大会を実施してくれて、そこに出ることへある程度の満足感を持ち、次の支部大会・全国大会へという位置付けに早くしないといけないと思っています。加盟団体が1000団体になれば県大会をやってくれる可能性も高くなる。もちろんこれは都道府県レベルで頑張ってもらわなければならないことですが、我々としても信号を投げかけ、補助もしてあげなければならない。そういったことも含めてトータル的に考えて、協会本部の方針として「加盟団体を増やしていきます」ということをもっと訴えていかないといけないと思っています。そうしないと最後の全国大会のステータス性も上がっていかないことに繋がる。

今回の全国大会を見ていても、日本のトップチームと言うと基本的に海外の強豪チームとも十分に争えるレベルにまできているわけですから、海外から見に来るお客さんもいるわけです。審査員を務めたジョン・フィリップ氏にも、逆に言うと日本の方がもっと洗練されているし、小学校や中学校などの下の底辺がしっかり底上げされていると言われたし、実際に私もそうだと思う。高校や一般のトップチームとなると海外と争ってもヒケをとるものでもなく、本当にクオリティーが高くなりました。

数と言うことで言えばDCIがいい例です。あれだけ減っていったわけですからね。僕がやっていた1977~86年ぐらいには700団体以上あったのが、今では100団体ちょっとしかなくなっている。一番の大きな問題には資金がなくなったというところ。しかしそんな中でもトップはトップですし、レベルは確実に上がっている。それなのに加盟団体は減っている。これほど怖いことはないし、協会組織としては団体数を増やしていくことを、今考えてすぐに行動をしないといけない。

そこに平行してやらなきゃいけないことが大会により魅力を持ってもらうための審査です。納得出来る審査になっていくことが大切です。しかしそれらすべてを早急にやろうとは思っていません。

もちろん何か問題が起きればそれは別問題であり、これまでにも対応はしてきたつもりです。出てきた結果は結果ですが、その起きた問題をなくすためにはどうするかというのが、連盟と指導者協会が一緒になって協会となった利点は何かってことに繋がる。指導する人達の集まりなので、そこを上手く利用することを考え、審査についての研修会を開催するというところまでは持っていきたい。

具体的には研修会を開催というところからだと思います。そんなすぐに最初からライセンス制を取るわけにはいかないですから…。
また、大会の日程的なこともまだまだ懸案事項です。12月開催で固めていこうとも思ってはいません。今回、初めて全加盟団体にアンケートをご協力頂きましたが、小・中学校の先生からすると12月でも厳しいという声もあります。特に中学校ですかね。今はどんどん受験が早くなってきて、5年前だったら中学校も12月に騒ぐことはなかったです。公立中学校の特に管理職の先生方の意見っていうのはやはりこの時期でも遅いという意見もあります。だからといってすぐに8月だ9月だということもないのです。支部大会もありますし。ただそういったことも考えていかなければいけないですし、逆に一般のチームからすれば、今でも早いというわけですよ。年を越してくれた方が良いと…。日程的なこともまだまだ色々考えていかないと思っています。

ただ一つ、スーパーアリーナで全国大会を開催出来たことはステップアップだと思っています。それでもまだ武道館が良いという人はいます。これは地方に教えに行けば行くほどですね。首都圏の人達の方が、会場の環境が良い方がいいよって言ってくれますが、地方の人達からすると『自分達が武道館に行ってやってきた』と言うのは、周りの人の認知度も違い、日本人的な特徴ですが名前ってすごく大きいのです。武道館からスーパーアリーナに移せたことで、サブアリーナでのリハーサルが出来るようになったこと、そして天候に左右されることもなくなったという部分では、出場するメンバーにとっての環境はグレードを一つ上げられたとは思っていますが、なかなか皆さんが満足している訳にはいかないのです。だからそういった色々なことも考えないといけないです。

今回のアンケートの中には、別にスーパーアリーナにこだわらず、もっと安い会場でいいから高校だけで1日やれば、枠数も増やせていいのではという意見もあります。もちろん全国津々浦々にアンケートを流せば色々な意見が出てきます。アンケートを取った以上は責任もありますから、色々なことをしていかないと。そういったことを踏まえた上で、いま一番やらなきゃいけないことはまずは数を増やすことが第一優先だと思うし、この4年間でしっかり組織として打ち出していきたい。
だからといってトップチームはどうでも良いと言っているわけではありません。やっている人達がたくさん増えることによってトップチームの人も自分のやっている凄さをよりわかってくれるということにも繋がるはずです。

方法としては吹奏楽部の方々にも協会のPRをして行くことを考えています。私たちの大会に出場してみようかと思ってもらえるようにしたい。音楽性であるとか、よりグレードの高いものを求めていく中で、私たち協会が先駆的にやっていけるようになれば自然と魅力は持てると思いますし、そこに出てみようかなと思っていただける環境を作っていくことはとても大事になってきます。

ジャッジシステムが違う中でどういう評価を受けるのか知りたいと思ってもらえるような組織になりたい。もちろん吹奏楽連盟さんのパレ-ドコンテストにも良さはあり、お互いに交流が持てて、お互いの良さを理解しあえるようになりたいですね。

私はパレードコンテストのドリルも作ったりしていますし、関西出身なので出来ないことではないと思っています。九州は良い例で上手に出来ているわけです。だから九州は今どんどん私たちの協会の加盟も増えてきています。今年、長崎が多分9団体ぐらい入ったかなと思います。

他に小学校では横浜で2月に開催している小学校の発表会の価値はとても大きいです。この行事のお陰で小学校の加盟団体が多いわけですからね。それはある部分では東北にいっても同じことが言えます。東北も小学校が一番多い。小学校はこういうことで良いのだよって事をすごく打ち出しています。関東とはまた違うモデルです。それを打ち出したがゆえに東北五県というところはみんな小学校がたくさんあるわけで多くの加盟団体があります。全国大会への推薦枠も、関東が8枠、東北は7枠です。それでは東北各県すべてが小学校のバンドフェスティバルをやっているかというとそうではないのです。東北の多くの学校では違っていて、「小学校らしさ」っていう発想をもって活動されています。小学校の先生達もそれだったら納得できるという結果、支部大会にも31団体が出るようになった一つの要因だと思います。

審査方法という部分では、小学校はもちろん総合評価ではありますが、より細かく、マーチングを知った人達が審査をしています。小学校の先生方にしてみればコメントをもらった方がより分かりやすく、次に何をやれば良いのかわかるとおっしゃってくれています。それが一つ協会の理想なのかもしれません。マーチング専門の協会なのだから、これは動いてなんぼなのです。その難易度を追求していかなくてはならないし、その中にあって音楽性をいかに表現していくかが協会だと私は思っています。それには少なくともその方向性への審査員の養成はしてはいますが、それが確立されているかというとこれは今からの課題だと思います。ただ、その部分と数を増やすという部分とを両輪としていかないといけない。料理と同じで材料だけが良くたって、良い物を作る技量がないとダメですからね。それにはいい審査と材料も必要なので、数も増やさなくてはならない。

まず両輪のうちの片輪にあたる「1000団体」というのは、これは法人化になるときに打ち出そうと思っています。増やすところは県しかないわけですから、本部としても出来る限りのサポートをして、それが出来る環境を作っていこうと思います。

人材ということを考えると、協会はもっともっと人が集まって欲しい。若手の人達と会うチャンスというのもだいぶ出来てきました。門扉を広げることを協会はもっとしていかないといけない。それで今後の国際大会に関しては加盟団体ではなくても出場可能にしました。インターナショナルの大会だし、国際大会は加盟団体ではない人達、いわゆるやっている人は誰でもいいですよということに変えました。

協会は法人に4月からになります。法人は公益と書くではないですか。公益性というと加盟団体でない人達も入れたイベントを開かないといけないのです。ちょうど良くこの機会に国際大会が昨年、何とか形が作れました、また前回の36回大会ではシンガポール、タイに…6カ国が見学にいらっしゃいました。シンガポールは80何人のツアーを組んで来てくれました。やはり各国ともに、日本に対してレベルというものは感じてくれています。特にアジア圏は。やはり日本のレベルの高さは見たいし、そこに出たいと。しかし今は難しくて、この円高でどうなるかというのが一つ急にネックになっています。本当は昨年の8月が終わった時点では来年は絶対に出場しますと言っていただいたのですが、この12月で一気に円高でしょ。60%近く資金が変わるわけです。その辺がまだちょうど不透明なところはありますが、今海外のチームに積極的にアプローチを掛けています。そして法人化のこともありこのインターナショナルコンペディションでは加盟団体じゃない方々にも出場してもらえるようにしています。

今、審査委員会で作成してくれているようなことも、もっと色々な意見が出てきて、協会として独自の方向性というものを出していきたい。
特に、それは学校教育の小・中・高等学校の中にあって、小学生が中学生を抜かしてはけないと思っています。アメリカに初めて行った時に思ったのは、アメリカはそれが出来ているのです。アメリカは小・中学校でマーチングをやらないですよね?やらないのではなく、『いま貴方達のその体の状態でそんなことはやらないでいいぞ。その子供に合った楽器も作る必要はない。やりたかったら、今はきちんと基本的なことを勉強してハイスクールでやればよいと。ハイスクールの子達がもっとやりたいのならDCIがあるからそこでやればいい。』と形が出来ている。日本の場合は、小学生の方が中学生より上手かったりする逆転現象が起こっている所もあるわけじゃないですか。それは別にマーチングの世界に限ってのことではないです。色々な分野でそれはあります。ただ私も本来の希望とすれば、小学生がやはり中学生を憧れてくれる、中学生が高校生を憧れてくれる状況に持っていきたい。それに関係してこれから先に考えないといけないことが、今の当協会の技能検定についてです。今は小学生が一級を取ることも出来ます。まだそこを具体的に着手するには色々なことをやらなくてはならないが、将来はこのシステムを改善してコンクールとリンクしてくるようには持っていきたい。また技能検定のシステムが現場の先生を助ける内容にしていきたいと思います
だから本当にやらなくてはいけないことが多いので、しっかりと整理をしていけば、おのずと理想に近づいていけると思います。そしてマーチング専門の協会として、各現場の方々が不満に思われている現状を打破していかなくてはいけない。その不満に思っていることの一番多いご意見はコンクールの審査に関わる部分です。それは重々私も理解は出来ています。しかし出てきた結果を言っても今は仕方ないと思っています。しかしその出てきた結果をもとに、それをどうするかは考えないといけない。少なくとも今までも結果が出てきたことに関して、野放しにしてきたわけではなく、それに対する防御策は一つずつ取ってきた結果が昨年から模擬審査をするという一つの結果になったと思います。それは理解して欲しいです。

リキャップに関して言うと、今はそれを出すつもりはないです。基本的に出すことを拒んでいるつもりはなく、もちろん参加団体には出していますが、今、オープンにしなくてはいけない理由はなんなのでしょうか?クライテリアに関しても今は一般の部だけは出していますが、まだ段階だと思っています。理想としているのは、さっきも言ったように、一般が一番であり、一番最高峰であって欲しい。そこのジャッジというものからしっかりと確立をしていっているつもりです。リキャップを公開していないもう1つの理由として、みんなが出して欲しいとは実は思ってないということです。それも理解しいて欲しい。それは学校教育という中にあった時にこういう風に評価されていますよというのは、その学校の先生が見て欲しい。でもそれを一般に公開をすると批判が間違いなく出ます。今はそれが出て欲しくないということと、それから参加団体によってもトップチームの人達は出て欲しいと思われている確率が高いのかもしれませんが。でもそうではないチームが我々の組織には沢山いるということも解って下さい。
特に小学校・中学校の毎年出られたり出られなかったりするチームにとっては必要性を感じていない団体もあります。これは先ほど言ったように、審査というものが確立されていって公認をした審査員が出来るようになれば、将来に向かって検討します。
でも、今お願いをしているのは我々の組織の中で育成をした人達がやってくれているわけではないのです。まだそこまで至っていない、もちろんこれは至る方向性に持っていかなくてはいけない部分とは重々感じています。感じてはいますが、今現状そうではない先生方にお願いをしている部分というのは、そういう人達にもマーチングを知って欲しい。こちらを向いて欲しいということもあるので、そういう方々にも審査員をお願いしています。

リキャップについては、3年後、4年後はわからないですが、少なくとも来年出すつもりはない。これはちゃんとした環境ができた上で、初めてそういうものが出来る環境になれば一般に出していくようにするかもしれない。今は、ホームページ上には金・銀・銅だけは載せています。その日のうちに結果が出るように構築しました。でもその個人個人の先生方の点数を載せるにはもう少し日時というか、日にちをもらう必要性があると思います。

もちろんそれを出して欲しい、そうすることがより良いことになるっていう面があることも充分理解しているつもりです。ですが、そうではないと思っている団体も、まだ全国大会に参加しているチームにもいるということです。そして一番はどうしたって色々な意味で批判の材料になっていくことが不幸だと思っています。私達が批判を受けるのは構わないです。審査員個人がうけることは避けたいのです。いま現状としては育成をしてお願いしているわけではないのでこれはまだ避けたい。

DCIの場合というのは、環境のバックボーンとしてそれで仕事が成り立っているという部分もあるじゃないですか。日本の場合はそうはいかないですから。我々としてはその部分をきちんとフォロー出来るだけの環境をつくるという事がまずは先だと思っています。しかし各団体に出していますので、その部分に関しては各団体からのご意見は吸い上げているつもりです。それを受けないつもりはないですし、もちろん受けているつもりです。もちろん答えられる部分と答えられない部分がありますが。

審査に関して段階的に環境を作っていかなければならないと考えています。今は少なくとも昨年から模擬審査と事前説明と言う方法で、協会はこういうシステムがあって、こうだからこんなところを見てもらいたいですとか、あなたの審査項目外だから、それはここの部分を言って下さいということまでは出来るようになったわけです。だからその先生がそこの範囲外のことを言われると、今回はこういう風にお願いしたいですと、言える環境にはなりつつあります。今までだったらその日に来ていただき、一応こうやってクライテリアがあってこうですよ。先生は音楽効果ですから音楽効果だけを見て下さいと言葉だけで終わっていたのが、やっと具体的にサゼッションが出来るようになったことによって、一つ環境が変わったと思います。
しっかりとサジェスションができてくれれば、あなたの審査項目はこうですからこの範囲をこうやって見て下さい。一般ならボックスがあって、100点から90点というとこういった内容が確立されているところはこの範囲の点数の中で入れて下さい。
そういう研修会を前日ではなく、審査をして頂く先生方が決まった段階で一回できて、勉強して下さいということを伝えて、また前日に最終確認が出来る環境に持って行きたいと思います

模擬審査をするということを参加団体に告知をしたか言われると、それは言っていません。別に隠したつもりはないですけれど…確かにホームページ上で審査委員会としてはこういうことを今進めてやっていますというインフォメーションとして載せるのは、ひょっとするとプラスの要因になるかもしれない。ただそれをあえて隠しているつもりはまったくなく、業務として我々はやっているだけでした。なるべく我々としてはみなさんが納得して頂ける、より良い審査に近づいていける状況を作りたいがゆえに、そういうことを始めたのです。
昨年は一回目で最終的には全員が出席とならなかったのです。今回はそれだけは避けようということで、前日からきちんと入っていただける方に審査をお願いしました。問題にはなりましたけれど、特にダブルキャプションのところは、なるべくそこで話をしてもらえる時間を持ちましょうとしたわけです。結果はその通りにはならなかったけれど、審査委員会でもそれができたことは良かったという話しにはなっています。だからそういう意味では前に進んできているとは思っています。

ゆっくりやっているつもりはありませんが、今は色々なところで仕事をさせてもらっているので、自分なりには情報は得ているつもりですし、偏った方向性には持っていきたくないだけです。最初に戻ってしまいますが、加盟団体を増やすには偏ってしまっていると、なかなか増えていかないですから、そういった意味でもいろんな色というのをしっかりと見なければいけないので、さっき言ったように他の方々の協力関係も考えていかなくてはならないと思っています。もちろん協会が独自のコンセプトというのは持っていくべきだと思っているので、マーチングの動くというものを要素にした音楽の発展の場であるということは、自分の中では作っていかなくてはいけないとは重々思っています。現実としては少なくとも日本国内だけではなくてアジアの人にしても日本のレベルはすごいねと思ってくれるようになったし、昨年(35回大会)よりDCIからジャッジが来ていますが、決して上から見ている目線ではなく、ゲーリー・マーカム氏にしてもジョン・フィリップ氏にしても、日本の今やっているマーチングというものに関する考え方としての認識は変わってくれています。マイケルゲインズ氏にしてもそうです。WGIの中でのガードの力にしても日本というものが変わってきているというのは見てくれているし、そういう意味ではこの組織というのはマーチングという一つのくくりの中では、しっかりとした方向性には向いて歩んでいけているとは思います。

野球が今やっと向こうの人達が、日本の野球は日本の野球として認め始めたじゃないですか。もちろんイチローだ!松坂だ!と、すごい選手が向こうに行っているからかもしれませんが、日本はねと言われるようになりたいというか、夢です。
そう言ってもらえる組織にはなりたいです。今はまだバトンの人達からもマーチングは輸入モンですものねと言われます。バトンは世界大会でもトップになったから自分達がバトンの世界を引っ張っているという思いがあるし、それはいいことだと思います。
マーチングはまだコピーと言われてしまっているというのは、何とかそうではなく日本のマーチングだよねっていう部分には持っていきたいし、それを作っていけることが夢ではあると思います。今はまだまだそういった意味ではその部はこれからだと思います。ただ、私の時代は、DCIは見に行く時代だったのが、今は見に行く時代ではなく、やりに行く時代になったのは一つ違いますね。
でもまだそこでやってきた人達が帰ってきた時には、やってきたシステムをそのまま日本の中でやろうとすることの方が多いので、そうではなく、日本のやり方がもっと構築されていくべきだと思います。もちろん何でもオーソリティーになるには真似事からと言われていますから、それは大事なことだと思います。
大事なことですが、将来的には日本のマーチングと言われたい。今はどちらかというと、特にうちの協会のマーチングはアメリカからと言われやすい。そうではなくて「日本のマーチング」という風になっていきたいですね。

DCIのジャッジシステムもすべてが良いとは思っていないですし、もちろんインドアとアウトドアの問題や、日本はアメリカにはないインドアの音楽の作り方と言うものもあると思っています。そこは一つ日本のマーチングとして考えていければいいです。
やっと8回目になりましたが、ステージのマーチングはこれも日本でしかないじゃないですか。海外ではあまりやらない。アウトドアであれだけの人数でフォーメーションを作ってというのが向こうのマーチング。でも日本はインドアでやるのだから、そのインドアの良さというのが、一つ日本のマーチングと言われる素材になるじゃないかと思っています。
いま現状ではステージの全国大会はコンテストにしていない。今のところ現状のシステムを継続して行こうと思っています。これこそ普及なのです。
ステージの全国大会に出てくる大半は全国大会に出ていないチーム。人数が30~50人ほどの団体が出場してくれています。地方からこの大会だけを目指して頑張って出てくれるチームもあります。そういった大会も協会としては積極的にやっていきたいです。
まだ、これは加盟団体しか参加出来ないようにはしていますけれど、少なくともこれを順位が出る大会にしてしまうと普及としては厳しい部分がある。
ステージは日本に合っています。一時は出るチームもなくて本当に大変だったけれど、ようやく沖縄から北海道まで合計40チームが参加してくれるようになったので、これをしっかりと進めていきたい。

さっきも言ったように749の加盟団体がある中でも、全国大会を目指して県大会に参加している数というのは実は400団体ぐらいしかない。あとの300何団体というのは加盟しているだけ。それは本部として放っておくわけにはいかないのです。言い方は悪いかもしれないけれど、お金を払って加盟をしてもらったら、それに対するフィードバックをするのが私たちの義務だと思います。それにはやはり全国大会だけではなく、昨年から始めた国際大会も一つ、そしてステージの全国大会も何とかしたい。

全国大会は36回を終えて、組織としては2009年で40周年です。
やっと夢であった法人になれるのは大きい。法人と法人じゃないのでは、周りの見る目が違います、一般社団法人という名前のもとに活動出来る事は、これこそ日本的かもしれないですが公的な名刺があるのと同じです。すなわち社会的人格を持つと言う事です。いろいろな意味で活動し易い環境になります。とにかく会員の皆さんにこの協会に入っている事へのより大きな価値観を持って頂けるように、改革してそしてマーチングというこの素晴しい活動をより多くの人々に認知して頂けるように努力します。

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