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2009 DCI World Championship

DCI 2009 ワールドクラスファイナル

「初のインドア大会でブルーが両クラス完全制覇!」
by マイク・フェルラッゾ(DCWスタッフ)

2009年8月8日、インディアナ州インディアナポリス。この日、DCIはその歴史に新たな1ページを刻んだ。その一つが電子楽器の使用だ。アンプによるピット楽器の音の増幅は2004年から認可されていたが、今大会からついに電子楽器そのものを使用することが許可されたのだ。また、今回はルーカス・オイルスタジアムという洞穴のような屋内スタジアムが使用され、DCIチャンピオンシップ史上初のインドア開催となった。

かつて我々の知っていたドラムコーというものは恐らくこうして永遠に変化してゆくのだが、ブルーデビルスのその非の打ち所のないパワーと精度はいつでも健在で、この日彼らはシーズン無敗記録まで打ち立てて見事に優勝を果たし、DCI最多優勝記録を更新して通算13回とした。ファイナルで彼らが打ち出した99.05というポイントは、DCI史上最高得点(2002 Cavaliers, 2005 Cadets)にあと0.1ポイントと迫るものだった。

さらに驚くべき事にこの日ワールドクラスに先立って行われたオープンクラスファイナルでは、ブルーデビルスのBコーがやはり無敗記録を引っさげて優勝を決めている。カリフォルニア州コンコードに本拠地を置くこの組織は、DCIにおいて同じ年に二つのクラスで同時優勝を果たした初めての団体となった。まさに驚愕の記録と言って良い。また、この両コーとも前年のファイナルでは僅差の逆転を許して優勝を逃しており、今年は見事に揃って雪辱を果たしたのも面白い。

「昨シーズンのあの土壇場の逆転負けはコーに本当に深い傷を負わせたんだ。今シーズンはスタッフもメンバーもみんな逆転負けの心配ばかりしていたよ。」エグゼクティブディレクターのデイブ・ギブス氏はそう明かした。「今年もセミファイナルを1位で通過し、ファイナルでもあれほどのベストパフォーマンスを見せたにも関わらず、フィールドから立ち去った後の彼らは心の底から笑顔を見せることができなかった。なぜならそこまでは昨年と全く同じだからだよ。みんな自分たちの出来には自信があった。それでも強い不安を拭いきれないんだ。それで私は彼らに言ったんだよ。『本当に、本当に最高のショーだった。だからもう笑っていいんだ。すべて終わったんだよ。いいかい?たとえ誰がどう評価しようと君らは最高だった。』とね。」

ブルーデビルスはカラーガードキャプションでなんと満点(20ポイント)を獲得してベストカラーガード(ジョージ・ジンガリ賞)を手にした。さらにベストパーカッション(フレッド・サンフォード賞)、ベストジェネラルイフェクト、ベストビジュアルと計4つのキャプションアワードを獲得している。総合得点で2位のキャロライナクラウンに1.5ポイントもの差を付けているのだから当然とも言える結果だった。

だが破竹の勢いで押し寄せるクラウンも決して負けてはいなかった。ファイナルで自己ベストポイントを記録し、自身初のシルバーメダルを獲得。さらに、今シーズンから正式に導入されたDCIファン・チョイス・アワード(DCI Fan Network によるファン投票)では1位を獲得しているのだ。また、彼らはベストブラス賞(ジム・オット賞)を勝ち取ってブルーに一矢報いている。

「確かにブラスは我々が一番自信を持っている部分だね。」クラウンのプログラムコーディネーター、ジム・コーツ氏はそう語った。「細部にまでかなりこだわったからね。そしてメンバーはしっかりとそれに応えてくれたし、今年の一つの目標を果たしたと言って良いと思う。本当に彼らは素晴らしいよ。」

ホーリーネームキャデッツはその75周年を祝し、彼らの人気レパートリーである“ウエスト・サイド・ストーリー”でチャンピオン奪取に挑んだ。惜しくも優勝は逃したが、2位のクラウンまでわずか0.3ポイント差というブロンズメダルはアニバーサリーシーズンに相応しい立派な成績だ。シーズン中、激しい2位争いを繰り広げた両コーだったが、キャデッツは僅差でクラウンに屈した形となった。

今回一番のサプライズは前年チャンピオンの歴史的転落だろう。クォーターファイナルで7位だったファントムレジメントのポイントはさらに下落を続け、土曜のファイナルでは9位にまで落ち込んだ。ディフェンディングチャンピオンとしては記録的な降格となってしまった。彼らは映画「レッド・ヴァイオリン」をテーマに臨んだが、あの名器のような奇跡を生み出すことはできなかったようだ。結果としてボストンクルセイダーズや(ワールドクラスでは)フレッシュな新顔、ブルースターズに前年チャンピオンを追い抜かせるという“誘惑(ボストンのショーテーマ)”をジャッジたちに与えてしまうことになった。

昨シーズン、1979年以来のファイナル進出を果たしたブルースターズは今シーズンも優れた成績を残して2年連続のファイナル出場を決めたが、同じくDCI結成当時からの参加メンバーであるトゥルーパーズも往年の面影を偲ばせて23年ぶりにファイナルの舞台へと戻ってきた。“2009ディレクター・オブ・ザ・イヤー” に輝いたトゥルーパーズのコーディレクター、フレッド・モリス氏はまさにその受賞にふさわしい。この伝説のドラムコーを3年間の活動休止状態から完全復活させ、23年ぶりのファイナル進出まで果たしたのだから当然だ。

「彼らを3年後にはトップ12に押し上げるというのが自分自身のプランだったんだ。だから自分個人としてはその目標を達成したと言って良いと思うよ。」モリス氏はそう語ってくれた。「まぁ何か分からないけど、うまく行ったんだろうね。とにかく本当に良いシーズンだったよ。これからもこの調子で行くさ。来年のプログラムも決まっているし、もう3曲は書き上がっているからいつでも練習に入れるんだ。」

DCI職員もまた来シーズンの準備は万端だと考えていることだろう。次回のチャンピオンシップもインディアナポリスのこの新しいスタジアムで開催され、今回の経験を十分生かすことができる上に、DCIの新しいオフィスはこのルーカス・オイル・スタジアムからわずか10分という距離にあるからだ。DCIのエグゼクティブディレクター、ダン・アチェソン氏によれば今回の土曜夜(ファイナル)のチケット販売数は17,000枚とのことだが、来シーズンはこの立地を生かしてさらなる観客動員の上積みを目指しているのは間違いない。

そのためにもまず改善しなければならないのは、このインドア施設でのサウンドクオリティの改善である。そのことはDCIスタッフもアチェソン氏自身も良く分かっている。この最新鋭スタジアムが今後DCIチャンピオンシップのホームとなるからだ。

「サウンドエンジニアからは『もちろん屋根を開けて使用してもいいですよ。そうすればいくらか音響は改善されるでしょう。』と了解はもらってあるのです。」アチェソン氏は説明を続けた。「ただ問題なのは、屋根を開けてしまうとバックフィールドの大きな黒いカーテンを使えなくなってしまうのです。屋根から入る突風によってカーテンはもちろん、他のそういった類のものも吹き飛んでしまう恐れがあります。」

「分かっていただきたいのは、我々がコーにとってできる限りベストな環境を与えようと全力を尽くしているということです。これはこの初年度だけの問題ではなく、今後もずっと続いていくことです。今後もこの施設が存在しここで同規模の大会が行われ続ける限り、私たちは一つ一つの細かな問題をついばんでいき、より良い環境を提供できるように努力し続けていきます。」

1位 Bule Devils ブルー・デビルス
“1930”

Blue Devils / photo by Richard Wersinger


Blue Devils / photo by Richard Wersinger

誰が今シーズンの最後にチャンピオンの栄光を勝ち取るか、ブルーデビルスがその栄冠に輝くことを疑う者はいなかった。それほど彼らのパフォーマンスは申し分のない完璧さで、最も厳しい批評家である観客たちも彼らをチャンピオンと認めて喝采を贈った。その優れたパフォーマンスはカラーガード、ビジュアルアンサンブル、GEミュージック(二人のジャッジのうち一人)の3キャプションで満点という結果をもたらし、ビジュアル全体としては30点満点中29.95という、パーフェクトと言っても良い驚くべき得点をたたき出している。

今回の “1930” というショーテーマもまさにパーフェクトだったと言える。現在の米国の経済的苦境を考えさせる見事な設定で、ショーの中でもこの“1930”という文字が三度も登場し観客の心をつかむ。かの世界大恐慌(1929年)の後に見られた楽観主義は、現在の株式市場の大暴落という荒廃の後に続く状況とシンクロして見え、アーロン・コープランド、ジョージ・ガーシュウィン、デューク・エリントンといった名作曲家たちのハートに触れるアメリカ音楽がそこにしっかりと共鳴していた。

しかしそれより大事なのは彼らのパフォーマンスそのものだ。彼らはフィールドにたくさんの白い折りたたみ椅子を出し、それに座ったり、ポーズを取ったり、上に立ったりしてショーを際立たせた。これ以上印象深いプロップが過去にあっただろうか。フィールド上のミュージシャンたち、そして時代がかったブライトイエローのコスチュームに身を包んだ陽気なカラーガードたちは、オリンピックのシンクロナイズドスイミング選手かと見まごうばかりの完璧なテクニックを見せつけた。

ファンたちの間で取りざたされている話とは異なり、実際にはあの椅子を使った演技の精度を上げることは見た目ほど簡単ではなかった。
「あれはとんでもなく難しかったよ。」ブラスアレンジャーのウェイン・ダウニー氏はそう明かした。「ショーを見た人はみんなこういうんだよ。『ブルーは椅子に座って吹いてたよ。』ってね。でも実際にやってみたらいい。テンポ200でフィールドを走り回ってから椅子に飛び乗り、ポーズを決め、楽器を吹き、またテンポ200で飛び降りてフィールドで走る。とても簡単な事じゃない。」

また、このチャンピオンシップ出場自体も実は見た目ほど簡単なものではなかった。チャンピオンシップの戦いが始まる前日に、数人のメンバーがこの夏多くのコーで流行したウイルス性の上気道感染症にかかってしまったのだ。それでも彼らは王者らしくその困難を乗り越え、(デビルにとっての)ラッキーナンバー、13回目のタイトルを手にした。

2位 Carolina Crown キャロライナ・クラウン
“ザ・グラス・イズ・オールウェイズ・グリーナー”

Carolina Crown / photo by Harry Heidelmark

3位 Holy Name Cadets ホーリー・ネーム・キャデッツ
“ウエスト・サイド・ストーリー ’09”

Holy Name Cadets / photo by Harry Heidelmark

4位 The Cavaliers キャバリアーズ 
“ザ・グレード・ディバイド”

The Cavaliers / photo by Harry Heidelmark

5位 Santa Clara Vanguard サンタクララ・バンガード
“マーサのためのバレエ”

Santa Clara Vanguard / photo by Harry Heidelmark

6位 Bluecoats ブルー・コーツ
“イマジン”

Bluecoats / photo by Harry Heidelmark

7位 Boston Crusaders ボストン・クルセイダーズ
“ザ・コア・オブ・テンプテーション”

Boston Crusaders / photo by Harry Heidelmark

8位 Blue Stars ブルー・スターズ
“ザ・ファクトリー”

Blue Stars / photo by Harry Heidelmark

9位 Phantom Regiment ファントム・レジメント
“ザ・レッド・バイオリン”

Phantom Regiment / photo by Gail Langan

10位 Glassmen グラスメン
“ザ・ジャーニー・オブ・ワン”

Glassmen / photo by Harry Heidelmark

その他出場団体

Colts / photo by Harry Heidelmark


Crossmen / photo by Harry Heidelmark


Madison Scouts / photo by Richard Wersinger

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