かえつ有明中・高等学校 マーチングバンド部 ESTEAM

Drum Corps Fun vol.2(2007年4月11日発行)に掲載

かえつ有明中学・高校マーチングバンド部ESTEAMは、1993年の嘉悦学園90周年を機に、校長先生から「マーチング」をやってみてはどうかというアドバイスもあり、それまでのブラスバンドからマーチングバンド部として活動を始めた。

顧問の打出由紀子先生は、それまでマーチングについての知識は全くなく、自ら勉強するためにアメリカDCIを見に行ったそうだ。最初は試行錯誤をしながらも、アメリカで打出先生が感じた情熱を生徒に伝えながら活動を続け、結成3年目の1995年には「WIZARD OF OZ」で全国大会初出場を決め、その後は、東京都大会においては11年間に渡り第1位を受賞、全国大会においても常に上位の好成績をおさめている。

バンド名となっている「ESTEAM (エスティーム)」は、6つの単語の頭文字を取って名づけられており、「仲間と共に手をつなぎ合い、ハートフルな音楽を一生懸命表現することで、大切な事が何であるかがわかる。さらに感動を分かち合うことができる。また、自分に誇りを持つことができる」という意味が込められている。

E – Everyone
S – Special
T – Together
E – Everyone
A – Achieves
M – More

打出先生にESTEAMの活動を通じて、メンバーに伝えていることは何かお聞きしてみると、「マーチングを通して、机の上だけでは得られない、社会に出て行く上での基本的な考え方、生活習慣を学び、部活動を通して「生きる力」を身につけることが出来た時にESTEAMERと成ります。さらに自分に立ち塞がる大きな壁(人間関係の悩みや、個人技術の伸び悩み等)を克服しながら、メンバー全員が「夢を叶えたい」という共通の目標に向かって一丸となれるチーム、それがESTEAM!と、一人一人がメンバーであることに誇りを持ってほしいと伝えています。高校3年間の活動の後にも、「夢を叶えたい」という気持ちを忘れずに持ち続けてくれている卒業生がいることは、とても嬉しいですね。2000年のDCI観戦ツアーに一緒に連れて行った生徒が、いきなり「先生、ここでマーチングやりたい」って宣言した時は何を無謀なことを言っているのだと思いましたが、その年のオーディションに受かり、本当に夢を叶え!現在DCIやWGIで活躍しています。CGの2人は、夏はDCIのチームへ、冬から春にかけてはWGIと渡米しそれぞれ2004,2005,2006年のワールドチャンピオンチーム「Fantasia」「Pride of Cincinnati」に所属し、今年も4月に行われる本大会に向けてライバルチーム同士頑張っています。2005年のDCI観戦ツアーでは、卒業生がフィールドで演技している姿を観て大変感動しました。また、彼女達に続けと後輩メンバーもDCIチームに入って活躍したり、トップクラスの一般マーチングバンドに所属して積極的に活動しています。」

かえつ有明中学・高校は大会以外にも、マーチングを多くの方に知ってもらおうと様々なイベントに参加、とりわけ江東区でのイベントには、地元地域への感謝の気持ちを自分たちにしか出来ないスタイルで還元したいという気持ちのもと積極的に参加している。最近では、学校に程近い『有明・豊洲』にオープンした「アーバンドッグ・ららぽーと豊洲」のオープンセレモニー」への出演も果たし、ファンファーレと共に約10分にわたる記念演奏をおこない、式典を華やかに演出した。

マーチングバンド部のモットーは「ALL FOR ONE, ONE FOR ALL」。そこでは、【100分の1=1分の100】という一見数学ではありえない公式?が成り立っている。自分は一人で頑張っているのではなく、多くの人に支えられているのだと常に自覚し、その上で自らメンバーの役に立てるよう全力を尽くすこと、「自分を大事と思うなら、他人を大切に!」という考えがチームの基本にあるようだ。

部のモットーに対する、メンバーの意識の高さは練習中でもとても感じることができた。メンバーの一人、副部長の小倉沙織さんに話を聞いて見ると、「辛い時こそ自分が頑張らなくてはいけないとは思うのですが...後輩にはいつも助けられます。後輩が私を支えてくれる力は本当にすごく、すごい頑張れるようになります!本当に後輩は大好きです。」

かえつ有明中学・高校は平成18年度より臨海副都心に校舎を移設すると共に男女共学校となった。今年度は、中学1年生と高校1年生の男子メンバーが6名が入部し元気に活動をしている。今後、男子メンバーが増えていく中でマーチングバンド部がどのような変化・進化を遂げるだろうと期待を抱いた取材となった。今後の活躍がとても楽しみである。

最後に、打出先生に将来の夢をお聞きしたところ、「自分自身がここまで情熱も持って取り組めることが出来たのはDCIの存在がとても大きいです。そのDCIにまずはエキシビジョンでの出演、最終的にはエントリーをしてみたいものですね。」との驚きの答えが返ってきた。

「かえつ有明中・高校マーチングバンド部ESTEAM」がアメリカDCIのフィールドに足を踏み入れるのはそう遠くない話かもしれない。

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