笹山 明博/Akihiro Sasayama
Drum Corps Fun vol.1(2006年4月27日発行)に掲載
ジャパンカップマーチングバンド、バトントワリング組織委員会事務局長
笹山 明博
毎年9月におこなわれているジャパンカップマーチングバンド、バトントワリング全国大会だが、この大会は現在各方面から出演団体が殺到するほどの大会となっている。このジャパンカップができたきっかけと、今後の展望についてジャパンカップマーチングバンド、バトントワリング組織委員会事務局長である笹山明博氏にお話をうかがった。
今から10年前に東京私立中学、高等学校協会の創立50周年記念式典が東京都体育館でおこなわれ、そこに東京成徳大学高等学校バトン部と、嘉悦女子高等学校マーチングバンドESTEAMが出演していました。その演奏、演技を見ていた東京都私立中学、高等学校協会の方々がこれらの演奏、演技にとても感動していただきました。当時は大きな3つの連盟がありまして、皆さん連盟のなかでの大会、コンクールにそれぞれ出場していましたが、「そこで自由に参加できるような大会を企画したい」という話がでまして、ここからはじまったのがジャパンカップなんです。会場はこの東京都私立中学、高等学校協会の創立50周年記念式典で押さえた東京体育館をそのまま毎年使わせていただくという形をとっています。
自由に参加できる大会を企画したいと言う話からジャパンカップは始まりました。
このジャパンカップ発足について当初は大会が乱立するだけとあまりいい顔はしていただけなかったんです。しかし、誰でも自由に参加できるオープンな大会ということで皆さんに賛同していただきました。マーチングバンドチャンピオンの関東学院マーチングバンドが出てくれたり、吹奏楽連盟のコーチングチャンピオンの東京都立片倉高等学校吹奏楽部が出てくれたりして段々盛り上がっていきました。当初は1日だけの開催で、名前も全国高等学校マーチングバンド、バトントワリング選抜大会だったんです。ただ前日リハーサルとして体育館は2日分押さえてありましたから、これを有効に使えないか、ということで5年前にジュニアとシニアの部を作りまして、出演していただきました。ただ、出演するだけでは楽しみがないわけで(笑)以後ちゃんとした審査方法を取り入れたジュニア、シニア部門の大会を用意しました。これがジャパンカップマーチングバンド、バトントワリング全国大会なんです。高等学校選抜大会は今年10回目、ジャパンカップマーチングバンド、バトントワリング全国大会は今年6回目になるわけです。
このジャパンカップという名前なんですが、特に意味はないんです(笑)何かいいネーミングはないかと探してはいたんですけどね。ただ、コカ・コーラさんが一番のスポンサーですから「コカ・コーラカップ」でも良かったんですけど(笑)企業名が出てしまったら・・とコカ・コーラさん側もいろいろと考えてくださって、じゃあ「ジャパンカップ」でいこう、ということになったわけです。
参加方法に関してうちは(事務局)ホームページを持っていませんから、問い合わせ等に関して、各連盟のみなさんに大変ご迷惑をお掛けしております。実際のところ、皆さんは参加等のことを誰がやっているのかも分からず、事務局がどこにあるのかさえも分からない状態ですよね。現状としては誰かの口添えであるとか、誰かの紹介でというような形をとっているんです。「インスパイヤーズさんからの紹介で・・・」みたいな感じですね。でもこれでは段々無理になってきました。「何でうちはだしていただけないんでしょうか」と言われるようになってしまいましたから。しかし、どうしても加盟団体をもっていない、加盟費も取らないとなると日本全国から応募が殺到してしまうんです。その点は皆さんに理解していただいて、ある程度の選考はさせていただくようにはしています。
ルールに関しても、色々な大会に出場している団体でもマーチング連盟の大会に出場している団体でもどちらでもいいようなルールを採用しています。たとえば演奏、演技時間に関しては「大体このくらいの時間にしてください」というのはありますが、多少オーバーしても減点の対象にはなりません。逆に余りすぎても同じです。要はやったことに対しての審査をするわけです。その辺が今のところはおおらかでいいと思いますが、今後は・・。
開催時期に関してはかなり悩みました。昔は高校生も大きな大会が1月でしたが、この時期に大会をおこなってしまうと高校の進学校は大学入試センター試験に重なってしまうため、出られないんです。じゃあ夏休みはどうか、ということになりました。当初は夏休みに大会を開催する計画でしたが、夏休みというと一番練習ができる時間ですよね。4月に新入生が入ってきて5,6月ごろに部がまとまってきて、夏休みは一番練習するんです。だから夏休み明けの9月に開催するのが一番妥当であると思ったんです。それより早くても遅くてもだめです。既存の大会に重なっていて迷惑をかけてしまうでしょう。進学校は3年生が引退してしまうところもあるからなんです。ですからジャパンカップは9月に開催しているわけです。
また最近ではAO入試や一芸入試などの入試制度を導入している大学が増えてきていますが、推薦入試にこのジャパンカップの成績を提出したりする場合、12月や1月に開催していたのでは推薦入試に間に合わないんですよ。その辺の考慮もしてあげなければいけませんからその観点からも9月開催が妥当であると考えているわけです。この時期を外すつもりはないですし、これでよければ参加してくださいという話ですから(笑)
マーチングの普及活動で一番大切な事は
実際に見てもらう事なんです。
ジャパンカップのもうひとつの意義としては「子供たちのおこづかいで素晴らしいマーチングを見れる場を提供したい」ということなんです。マーチングの普及活動で一番大切なことは実際に見てもらうことなんです、しかも安い金額で。今日、マーチングは音楽的にもレベルが上がってきており、総合芸術として世間に認知されはじめていますが、まだまだ一般的な認知度は低いと言わざるを得ません。そこで、今現在マーチングをしている小学生、また大会を見に来てくださった方々に広くマーチングの素晴らしさを知っていただきたいと考えています。
現在、ジュニアの部は小学校、中学校が一緒に審査されていますが、将来的にはもっと参加団体を増やし小学生の部、中学生の部に独立できればと考えています。またいずれは真の日本一を決める大会に発展していければと考えています。
インタビューを終えて、ジャパンカップは中学生、高校生の勉強面に配慮しながら開催されているイベントであるということが良く分かった。さらに子供たちに安い料金でマーチングの素晴らしさを知っていただきたいという真のマーチング普及活動だったのである。今後子供たちがこのジャパンカップを通じてマーチングと出会い、さらに広まってほしいという笹山氏の願いを感じたインタビューだった。